どうにもなりそうにない燃料問題

現在世界各国で目下の課題とされている燃料問題。二酸化炭素排出量削減、石油燃料の枯渇など私たちには新たなエネルギー源となるものが急ぎ必要です。その対策として研究されているのが、皆さんもよくご存じのこれら代替燃料です。

・燃料電池(燃料電池自動車)
水素と酸素を化学反応させて電力を作る装置を搭載した自動車。CO2を含め、環境や人体に有害な排出ガスが全く出ない、または少ないと非常にクリーン。ガソリン内燃機関と比較して、2倍近いエネルギー効率を持つ。駆動音も殆どなく、騒音が非常に少ない。しかし製造コストはガソリン内燃機関の50~70倍と超高コスト。構造的にも水が液体でいられる0℃~100℃の環境下でしか機能できない。加えて発電に必要不可欠な水素をどう搭載・供給するかなどの問題を抱えている。

・BDF(バイオディーゼル)
様々な原料油脂(油ならほぼ何でも)を、メチルエステル化(※1)などの化学処理を施して生成する代替燃料。生成が容易だが品質の確保に課題。栽培から加工までの投入エネルギーと得られるエネルギー、温室効果ガスの放出量もバイオエタノールよりバイオディーゼルが有利。しかしエンジンや燃料供給装置がダメージを受ける。製造時に副産物として出るグリセリンも処分・売却が難しい。

・バイオエタノール
炭水化物を含む原生生物由来資源ならどんな物からでも生成可能な他、石炭・天然ガスから合成される燃料。さとうきび等の生物体(バイオマス)を利用してエタノールを生成した場合、排出される二酸化炭素は原材料となった植物がいままで吸収してきた二酸化炭素を放出するだけ(カーボンニュートラル)なので、大気中の二酸化炭素が増えない。しかしエンジンや燃料供給装置がダメージを受けるなどの他、フードセキュリティー・農業の環境負荷の観点からも燃料として問題あり。ガソリンにくらべて燃焼時に発生する有毒物質が多い。

・CNG(圧縮天然ガス)
圧縮した天然ガスを高圧容器に貯蔵して車に積み、圧力をさげてエンジンへ供給する燃料。ガソリン・軽油と比較して二酸化炭素の発生量が少ない。埋蔵資源ではあるが可採埋蔵量も豊富。しかし気体のため車に積める量が少なく、満タン時からの走行距離が短い。運搬も難しく、初期導入コストの高さから採算の取れない燃料になる可能性がある。

・DME(ジメチルエーテル)
天然ガスや石炭から安価に大量生産でき人体に無害とされる(超低毒)燃料。軽油と同等以上のセタン価があるためディーゼルエンジンに適している。実用化に向けた開発段階。煤がまったく出ないため排気ガスがクリーンであるが軽油と比べて発熱量が低いため同じ出力を得るのに約2倍の量を消費してしまう=EPR(※2)が低い。加えてバイオエタノールと同様エンジンや燃料供給装置がダメージを受ける。

・GTL(gas to liquids)
LNG(※3)とはまた別の液化ガス燃料。天然ガス等を水素と一酸化炭素の合成ガスに変換し、さらに分子構造を変えて液体にした燃料。セタン価(※4)が高い。軽油の性質に近いためディーゼルエンジンの改造無しでの使用が期待されている。実証試験中。既存インフラの利用が出来る等、実用化が容易。煤などが発生しないため、排気ガスがクリーン。燃料の特性上、エンジンや燃料供給装置がダメージを受ける可能性があること、製造コストも高く、製造時のCO2排出量も課題。

現行でガソリンの代替燃料となるものにはとにかく問題点が多く、「動力機関を傷める」「コストが高い」「製造上問題がある」等、頭を抱えたくなるような痛し痒しの代物ばかり。もはや各代替燃料の技術発展を祈る他無く、各代替燃料は今も研究中です。果たしてこの先、これらの問題が解決されることはあるのでしょうか・・・燃料問題の行く末はこの先暫く目の離せません。

※1…水酸化カリウムの存在下でメタノールと反応させ、グリセリンエステルからメチルエステルへのエステル交換反応を起こさせる。
※2…エネルギー利益比。エネルギー生産に必要な入力エネルギーと生産される出力エネルギーの比。
※3…liquefied natural gas。メタンを主成分とする天然ガスを冷却、加圧して液化したもの。都市ガス用・発電用燃料、化学工業原料に用いる。
※4…ディーゼル機関用燃料の発火性を表す数値。

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