中途採用の中高年人材『オヤジさん、よろしく頼みますよ。(採用の背景と導入時に起こりやすいトラブル編)』

中小企業における採用難と人手不足について以前から触れてきた話題ですが、この課題への一つの解法をみなさまにもお伝えできれば、と考えた新シリーズ。モデルとして地方都市の人手不足に喘ぐ中小企業に早期退職で転職してきた中高年社員のドタバタ劇を描くなかで、中途採用人材の運用上起こりやすい課題とその解決方法、中高年人材の利点や活用法などをご提案いたします。

ここは日本海側のとある地方都市。そこで長らく人手不足に喘ぐ当社では当座しのぎにハローワークの求人を見て来たという中高年人材の採用にまた踏み切った。この辺りではもはや単に「若者」というだけで超希少・超貴重人材になっており、シルバー層に足のかかった人材の採用・運用が不本意に進んでいる。アラサー世代の自分やアラフォー世代ですら「若者」に分類され、これから同僚として働くことになる彼は自分の父親と同じ世代の人間だ。

「よろしくお願いします。」

中高年らしい落ち着いた物腰に安心感を覚えたが、すぐにそれが早過ぎる評価だったと思わせられることになる。「オヤジさん」の愛称で呼ぶことになる彼にこんなに苦労させられるとは。

「ちょっといいかな」

何をさせても必ずなんやかんやで躓く。ノギスの使い方がわからないと知ったときは驚いた。オヤジさんの前職はIATFを取得している製造業だったはずだ。ばつの悪そうな顔をしているオヤジさんを前に、かつて自分も「なんでこんなこともできないんだよ」と指導担当から怒鳴られたことを思い出す。やっぱり「できることが前提」って間違いじゃないか。

サッカーをしたことのない人がいきなりグラウンドに立たされてまごつく姿と、チームメイトから怒鳴り声で責め立てられる絵が頭に浮かぶ。どうしたらいいか、何が必要かは分かっている。

「まったくもう…オヤジさん、よろしく頼みますよ。」

今日だけでもう8度目になるヘルプに思わず悪態をついてしまったが呼び掛けに応じ、させてみて一人でできることが確認できるまでフォローするとオヤジさんは頭を搔きながら「いや、助かった。ありがとう」と笑った。その顔を見て9度目のヘルプが来ないよう、次にさせる仕事の要領書を今の内に用意せねばと決意を固めた。

「どのようにして人材を得るか」という課題に臨むとき、「獲得しうる人材はどこにいるのか」を考えさせられます。そこで逆さピラミッド型をした人口の世代別分布を見たとき、今後多くの企業が中高年層の人材のアセスメント・採用・運用について努力と勉強が求められることが予想されました。すでにそれを裏付けるような事例も散見されておりますが、みなさまのところではそうでないことを願うばかりです。それでは次回(中高年人材のアドバンテージ編)をお楽しみに。