書籍紹介『「顧客を見れば、戦略はいらない 解像度を上げるボトムアップマーケティング」』

これまで何度もメルマガの中で「中小企業に於ける営業努力の重要性」という話題について触れてきましたが、今回もこのテーマについて考える上で参考となる一冊をみなさまにご紹介いたします。『「顧客を見れば、戦略はいらない 解像度を上げるボトムアップマーケティング」2024/11/22 川端 康介 (著)』は、従来のトップダウン型の戦略策定に疑問を呈し、顧客への深い理解(解像度を上げる)に基づいたボトムアップ型のマーケティングの重要性を説く書籍です。著者の川端康介氏は、長年のマーケティング支援の経験から、不確実な現代において、予測に基づいた戦略よりも今この瞬間の顧客のニーズや状況に寄り添うことこそが成果に繋がると主張します。

本書では、目の前の顧客を徹底的に理解し、そこから得られた事実(ファクト)とデータに基づいて、柔軟かつリアルタイムにマーケティングを実践するアプローチを提唱しています。従来のマーケティングで重視されてきた「インサイト」を探るよりも、「今、顧客が何を求めているのか」「どのような状況で自社の商品・サービスが選ばれているのか」といった具体的な事実を捉えることの重要性を強調しています。

具体的に内容をかいつまんでご紹介すると、第1章から第2章では過去の成功体験や戦略論に基づくトップダウンに固執するのではなく、顧客接点でのリアルな情報やデータを重視し、そこから意思決定を行うことの重要性が説かれ、長期的なブランディングも重要としつつも、まずは「今、この瞬間に顧客に選ばれ続ける」ための具体的な施策を実行することに焦点を当ることが説かれています。

第3章から第4章ではターゲット設定においても、「買ってほしい人」ではなく「買ってくれる人」を深く理解することから始めるべきだと主張。具体的な購買データや行動データ、顧客の声といった事実に基づいてマーケティングを進める方が確実性が高いと述べ、単純な「顕在顧客」「潜在顧客」という分類ではなく、「自社ブランドの便益を最も享受しやすい状況にいるかどうか」という視点から顧客を捉えて、「買われやすさ」を高めるアプローチが解説されています。CVEPという考え方に基づき顧客が「いつ」「どこで」自社の商品・サービスを求めているのか、そしてその際の競合となる選択肢は何かを具体的に分析することで、より的確な施策を導き出す方法を紹介しています。

変化の激しい現代において、従来のマーケティング手法に限界を感じている方や、より実践的で効果的なマーケティングを模索している方にとって、新たな視点と具体的な行動を示唆してくれる一冊と言えるでしょう。