新著紹介「現場の会計思考」

「現場の会計思考」
kaisya_kaigi_muda必要に迫られていることをどれだけ訴えてもコスト削減が実現しない。そんな職場の状況にいつも困っている、という方はいらっしゃいませんでしょうか。かといってどんなに指導に力を入れても、かえって職場の空気が悪くなるばかりで多くの社員は委縮してなお一層動きが悪くなるか離職する始末。たまに一生懸命働きだしたかと思えば、いたずらに頑張りが空転するばかりで業績回復への貢献には至らないのがほとんど。実はこれらは「会計的な思考」が欠けているのが原因ではないでしょうか。そんな悩みを抱えたみなさまの一助となればと、今回おすすめの一冊をご紹介いたします。

今回ご紹介するのは『ビジネスの世界で生き残るための現場の会計思考 安本 隆晴 (著)』です。
部分最適に陥りがちな社員の志向を全体最適に向けるための手段の一つとして「会計思考」の活用が提案されており、その前提からかこの本の作りはこれまで全く簿記・会計について見識のない方が読むことを前提に作られているのが感じられます。money_chouboこの本の特徴はこの手の本にありがちな「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」の具体例が出てこないという点。全く出てこないわけではないですが、全く簿記・会計について見識のない方が読むことを前提としているだけにそれを割愛したうえで分かりやすく要旨がまとめられています。

money_fueru中でもおすすめの内容は、2章で紹介されている5つの利益の表現。簿記や会計について知識がない人でも損益計算書の要点がわかりやすい形で示されています。他、「会計がわかれば、給料への意識が180°変わる」「なぜノルマは、利益でなく売り上げなのか?」「キャッシュフローと黒字倒産の関係性」は簿記・会計に縁遠い人にほどよく読ませたい部分。
「会計がわかれば、給料への意識が180°変わる」では多くの勤め人が抱きがちな、労働に対して給与や賞与が少なく感じるという不満について、それが誤解であることが会計的に解説されています。経営者や経営幹部が説明しても立場的には言い訳しているようにしか見えなくなるこの話題についてズバッと解説されているところは経営者層にとっても非常にありがたく感じるのではないでしょうか。
soudan_financial_planner_old「なぜノルマは、利益でなく売り上げなのか?」では、そのエクスキューズとして損益分岐点の考え方がわかりやすくまとめられています。「キャッシュフローと黒字倒産の関係性」では締め日と支払日の設定、およびその管理について触れられていますが、現金預金の重要性を上手く理解させられれば、さらにそこから在庫を減らす努力の重要性や売掛金の早期回収の重要性も理解させやすくなる内容になっています。

money_kakeibo_happy中小企業が目指すべき顧客満足と利益追求の緻密なバランス取りには社員ひとり一人の力が欠かせないのです。そのためには簿記・会計に関する社員教育が必須といえます。
冒頭で社員の指導に行き詰った課長が登場しますが、狙いこそ支持できるものの手法はとても褒められるものではありませんでした。今回紹介する書籍、是非にご活用いただきたいと思う一方、みなさまにおかれましてもこの本をポンと部下や新人に渡して「これで勉強しとけ」なんていうことをすれば本末転倒なのはお忘れなく。