未然に防ぎたい行き違い ~板巻きパイプの溶接ビード~

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お客様とのやり取りの中で生じる行き違いをテーマにした本稿の第5回目は、『板巻きパイプの溶接ビード』についてです。新規のお客様からご依頼をいただく際に、規格の鋼管と板巻きパイプの違いをご説明することがしばしばあります。このときに説明することの一つが溶接部の仕上がりについてです。

溶接ビードイメージ
・溶接部の盛り上がりについて
弊社へパイプの製作をご依頼の際、「ビードカット」を指定される方もいらっしゃいますが、この指定は多くの場合規格の溶接鋼管をイメージされてのものではないでしょうか。

規格の溶接鋼管は主に「サブマージアーク溶接」「電気抵抗溶接」「鍛接」のいずれかの方法で製造されますが、この加工方法に起因して接合部が溶接時の余盛や圧接時に押し出しで盛り上がってしまいます。このために必要なのがビードカットという処理です。

・板巻きパイプの溶接ビードは盛り上がりが少ない
一方、弊社の板巻きパイプは接合部の盛り上がりが少なくなっています。これは接合部に溶加棒や溶接ワイヤーを使用しない「突合せ溶接」で溶接するからです。鋼板をロール成形し、その両端を突き合わせてからTIG溶接で母材同士溶け込ませて接合させる方法のため、また加工対象としている鋼板がごく薄い(0.5t~1.5t)こともあって接合部が規格の溶接鋼管のように盛り上がらないのです。こうした理由から、弊社の板巻きパイプはビードカット不要でそのまま使いいただけるのです。しかし、板厚が厚い場合のみご注意いただきたいのが、溶け込みによるへこみです。厚い分強く溶け込み溶接(裏波溶接)を行うため、溶接ビードに僅かなへこみが生じてしまいます。

今回は板巻きパイプの溶接ビードの仕上がりについて、規格の溶接鋼管との違いをご説明しました。次回もお客様とのやり取りの中で生じる行き違いをテーマに、お役に立てる情報を発信して参ります。どうぞお楽しみに。