外観異常に対する認識の教育

「なあ。君に作業してもらったパイプから相手部品に組み付かないって不具合起きたんだが、不具合現品の内径を測定すると縦横で寸法が違うんだよ。おかしいと思ってよく観察してみるとパイプの端面に少し凹みがあるし床の塗料がわずかについていたんだ。君、作業中に製品を床に落とさなかったか。」

「はい。実は手元を誤って…。でもすぐ拾って問題ないかもよく見て確認したんです。凹みも汚れも大したことないので大丈夫だと思いそれでそのまま良品に入れました。以前も少し落としたくらいでは何ともなかったので…」

「…。そうか。」

このやり取り。みなさまなら何が問題と考え、どのように対策されますか。今回は異常管理に関する若手・新人たちへの指導についての記事です。

冒頭の上司と部下のやり取りでは異常に気付きつつも製品が落下したことによる影響を過小評価して不具合品が流出した経過が描きましたが、部下の対応・判断が完全に誤りだったかというと必ずしもそうではありません。ただ、気付いた異常に対して確認と想像が不足していたのです。落下による影響が僅かであり、これまで同程度の凹みや汚れがあるものが問題なかったとしても製品毎に使用用途は違い、寸法公差も異なります。この点を部下が認識していれば不具合流出はなかったでしょう。

プロセス管理的な管理手法の定石から言えば、異常への処置は「止める・呼ぶ・待つ」の対応と判断をするべきですが、日々の作業とOJTが並行して行われる中小企業では実態にそぐわないでしょう。社員一人ひとりが「判断」「決断」できる力がなくては。一方で、製品側に起こる代表的な異常でさえ「変色」「錆」「異物(切粉、バリ、プレスカス、ホコリ)付着」「水濡れ」「穴の開いた梱包箱」「溶接時のヒューム、スパッタ」など多岐に渡り、それぞれの異常の影響を指導なしで若手や新人に管理させるのが如何に困難なことかはみなさまにも想像に難くないことかと存じます。

感覚、感性は人それぞれのため「常識」を当てにして新人や若手に作業を任せてしまうことのリスクの高さは容易にご想像いただけるはず。だからこそ、彼らに自分が作業している製品がどのように使われるか。作業上、これまでどのような不具合や異常が起き、それにどのように対応したのか、結果どうなったのか。これから作業する上でどのようなことに注意するべきなのか。もし未知の事態が起きたとき、どうするべきなのか。最低限、ここらの辺りまでは外堀を埋めてやるべき出ではないでしょうか。それが指導担当の思いやりであり、管理監督者の責務ではないかと存じます。