中途採用の中高年人材『オヤジさん、よろしく頼みますよ。-2』
中小企業における採用難と人手不足の一つの解法として始まった新シリーズ。その第2回は中途採用人材の採用選考段階のアセスメントの重要性と採用後の善後策について描いていきます。どうぞお楽しみください。
ここは日本海側のさる地方都市。長らく人手不足に喘ぐ当社では当座凌ぎに中高年人材の採用に踏み切った。履歴書、職務経歴書から伺えるキャリアは申し分なかった。正直当社の中途人材の求人内容で来てくれたのが「よく来てくれた」と思ったほどだ。ところが、今はなぜ人事は試用期間中に解約を決断しなかったのかとボヤかずに入れない気持ちだ。確かにこの人の後にもっといい人が得られるかは、この地方にあっては望みが薄いのは痛いほど理解できるが…。
「オヤジさん、この案件まだ仕掛ですけどなんでクローズしてないんですか」
いつまでも完結しない複数の課題にしびれを切らして思わず尋ねる。
「いや、外注さんからの資料がまだ上がってこなくてさ。困っちゃうよね。何度も催促のメールは入れてるんだよ。」
まただ。この人に任せると仕事が終わらない。
「ではこの件は?」
「あ、それね。『試作品が測定上、NGの寸法』って言われても、それを解決するのって試作を主導した生産技術か、どうしたらいいかのすり合わせを客先交渉する営業の課題でしょ。僕に言われたって職掌外の仕事じゃない?」
サッカーをしたことのない人がいきなりグラウンドに立たされてまごつく姿と、チームメイトから怒鳴り声で責め立てられる絵が頭に浮かぶ。どうしたらいいか、何が必要かは分かっている。
「まったくもう…オヤジさん、よろしく頼みますよ。」
外注先へのアポイントと生産技術、営業との打ち合わせの段取りを促してしてため息をつく。ダメ押しで先の展開のスモールステップと、また進捗が行き詰まった場合に待っているオヤジさんの悲運を言って聞かせた。なお腹立たしいのは、オヤジさんはちゃんと尻を叩くともの凄く「できる」という事実だ。『できるなら最初からやってくれよ』という言葉がいつも頭を過る。
都市部との人口格差から、地方の方が先により強く「来た人をどう上手く使うかを考えないと立ち行かない」という現実に直面しています。世代別の人口分布における多数派をターゲットにした人材戦略をご提案しているこのネタですが、キャリア的背景から言っても中高年層の人材をどう上手く使えるかの蓄積があるかどうかで、ことの成否がかなり別れるのは間違いないでしょう。それではまた次回に。