中途採用の中高年人材『オヤジさん、よろしく頼みますよ。-3』

中小企業における採用難と人手不足の一つの解法として始まった新シリーズ。その第3回は中途採用の中高年人材の利点ついて描いていきます。

ここは日本海側のさる地方都市。長らく人手不足にあえぐ当社では当座しのぎに中高年人材の採用にまた踏み切った。履歴書、職務経歴書から伺えるキャリアは申し分ない。ただ採用後の仕事ぶりはすこぶる奮わないが…

「それではこの海外案件はオヤジさんにお願いします。仕入先の海外メーカーを指導、補助して量産立上げまでの管理をしてください」

 

定例会議での本部長の言葉に肌が泡立った。自社の主力メンバーが真っ向勝負で挑んでも手に負えない仕事なのに。これまでのオヤジさんのダメダメっぷりが走馬灯のように頭をよぎる。動機と頭痛で自分の今の血圧が160を超えているだろうことを悟った。確かにオヤジさんは海外駐在の経験者だ。だが当時の話を聞いて出てくるのはいつも酒の席での武勇伝。ジェネレーションギャップなのか憧憬や羨望の感情よりも軽蔑の念の方が強い。

だが案件が走り出してから自分の認識が完全に誤りだったことを思い知らされた。オヤジさんはこれまでのことが嘘だったように完璧なAPQP(先行製品品質計画)で海外メーカーを先導し、漏れのないPPAP(生産部品承認プロセス)で客先とのすり合わせを進める。

自動車業界に属する企業は試作から量産開始までの一連の流れが大体似てくる。IATFの認証を取得していた企業でのキャリアを持つオヤジさんにしてみれば、勝手知ったる他人の家。これまでの職歴の分顔も広く、社外にも知己は多い。正攻法では解決が難しい課題も多彩な搦め手で片づけていく。

そもそも、プロ野球選手を「同じ球技だから…」という安直な発想でいきなりサッカーのマウンドに放り込む方が人事・運用として間違っているのである。学習と成長を前提にできる2,30代の若手人材に対して、すでにビジネスマンとしての『型』ができ上っている中高年人材の中途採用の成功のカギは「ピース(人材)が穴(企業の課題、都合)に合わせる」を求めるのではなく、「穴(企業の課題、都合)に合うピース(人材)を充てる」仕組み・運用をどれだけ上手くできるかにかかっているのではないでしょうか。