世界のエリートは、なぜ「美意識」を鍛えるのか? -続発する不祥事との関係-

・続発する企業不祥事 その根本的要因

企業の不祥事がニュースに流れ、経営者が記者を前に謝罪している場面をよく見るようになりました。老舗企業がこうした不祥事を起こすのは、多くの場合、伝統的な業界慣習や商習慣が、一般社会の法制度や社会常識から元々外れていたのが、IT技術の普及で簡単に暴露されやすくなったからだと言われています。

自動車業界の検査結果の問題や食品製造業界の賞味期限問題など、「昔からこの程度はお目こぼしされている」や「今まで問題になっていないから大丈夫」が問題となった事例です。

『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(山口周著)には、有名新興系企業が不祥事を起こす構図が書かれています。近年ではDeNAがゲームの高額課金や児童の出会い系サイト利用、「まとめサイト」の掲載情報の信憑性など、連続して問題化しています。

二つの大きな要因が組み合わさって不祥事が発生していると分析されています。一つは新興企業経営者の達成動機の強さです。何かを達成しようとする気持ちを持つことは、悪いことではありません。しかし、世の中が複雑になって商売の機会も不安定になってくると、達成動機が強ければ強いほど、法的・倫理的制約のタガを外してでも成果を出したくなります。

一方で世の中が複雑で変化しやすいものになって、法律の整備が追いつかないグレーゾーンが社会のあちこちで発生し始めました。達成動機が強い経営者なら、グレーゾーンで利益を上げようとするでしょう。新興企業は、老舗企業とは逆に、従来のルールや常識を無視してまで利益を追求することで、不祥事を引き起こしています。ライブドア事件でも、証券取引時間外に大量の株購入が問題となりましたが、その時点でこのような取引は違法ではなかったのです。

違法ではないのに有罪になる。なぜダメなのかを決める基準が、先述の本にある「経営の美意識」です。それはつまり、不祥事を防ぐために、会社は常に「世の中全般的に見て許されるか否か」を意識する必要があると言うことなのです。