営業の新人は与信管理のために何を見ればよい? 取引先観察

営業職の仕事は自社の商材を売ることが第一ですが、その延長線で取引先(顧客、見込み客、外注先)の与信管理もまた重要な仕事の一つ。そして当然若手、新人の教育の上でも自社なりの与信管理について指導せねばなりません。今回はその手法や視点についてのご提案の記事となります。

与信管理は調査会社からの評価が全てではありません。特に中小企業の場合数が多いため、その精度は落ちがちです。最新の与信評価を得るには営業担当が実際にその企業を観て、聴いて今現在の動的な情報を分析・考察し、最新の状態に更新するしかありません。実際帝国データバンクの調査員も現地・現場での調査・観察を旨としているそうですが、取引先を訪ねた際に同伴した若手、新人へ「どこが(何が)、どのように観えたか」「何が(どんなことが)聞こえたか」を帰りの道すがら尋ねることで、観察眼を養うのを狙われてはいかがでしょうか。

もちろん手放しで任せて全く無軌道に取引先を観察・聴取させても的外れな結果になりますので、ある程度焦点を絞ってやるべきでしょう。みなさま自身にも様々なご意見があるとは思いますが、この最低限見させたい、考察させたいポイントについて『倒産の前兆 30社の悲劇に学ぶ失敗の法則 帝国データバンク 情報部 (著)』からいくつかを引用しつつ、その意図について私なりの解釈を添えさせていただきます。

まず真っ先に挙げられるポイントは取引先への訪問の際、事業所内の様子の観察や雑談を通して得られる社長の人物像や社員・従業員のレベル。口外するのが憚られるところではありますが、引用書籍でも挙げられているように経営者と社員から伺える情報は今後の行く末を占う上で非常に大きな情報です。

例えば『破綻の公式2 大ヒット商品が綻びを生む』で挙げられた事例のように、一口で言うと経営が、事業が、社を構成する諸々が整っていないし、整わせる力がないという問題は社長の人物像から伺えますし、その結果が社員の姿から見て取れます。あるいは『破綻の公式6 経営陣と現場の乖離は取引先の離反の元』で挙げられた事例のように、5Sの乱れた社内や書きなぐられたスケジュールボードは経営陣と現場の乖離の兆候です。もちろん他にも見るべきところはありますが、枚挙に暇がありません。若手、新人の成長段階や各社における必要性・重要性に応じて指導担当が都度匙加減されたら良いと考えます。

まずは同業他社との比較、これまでの状態との比較。それが与信情報を分析・考察する基礎でしょう。こうした与信管理のために行う取引先の情報収集は、ひいては取引先の課題・ニーズの把握に結びつきます。実は与信管理は攻めの活動と一体のもの。その目を新人教育の中で養わせることが将来の自社の営業力向上に結びつくはずです。