メタルレポートⅡ-バイメタル-

さて、今回はメタルレポートⅡの3回目として、バイメタルについて取り上げます。Tig溶接で接合可能な鋼種であれば、どのような素材のパイプでも作ることができる板巻きパイプのアドバンテージを生かせる用途や素材はないかと調べを進める中で今回はこの鋼種に目を付けました。

そもそもこのバイメタル、熱膨張率の異なる2種類の金属板を冷間圧延で結合させたもので、もともとは時計職人が高精度の時計を開発する過程で発明したものでした。さらされる温度の変化により、結合させた2種類の鋼材の熱膨張率の違いから、鋼板が反り上がる特性を利用して温度計や温度調節装置、スイッチの接点やサーモスタットなどに使われているのです。

一方、これとは別の使われ方があります。この見方でいうと刀もバイメタルの構造をしているといえ、バイメタルの定義を「異なる2種類の金属板を結合させる」という構造的な特徴にフォーカスし、強靭な鋼種と強固な鋼種を結合させ、長寿命な刃具として用いるのです。このように一般的な用途としては「刀」が挙げられ、専門的な用途としては「バイメタルソー」と呼ばれるものが挙げられます。「刀」は説明不要かと思われますが、バイメタルソーとは刃部に高速度鋼や粉末ハイスなど耐摩耗性に優れる鋼材を使用し、峰部にはバネ鋼など靭性に優れる鋼材を使用する事で折れにくく、なおかつ長寿命な刃を持つのが特徴の刃具です。こういった様々な分野に使用されている金属なのです。

しかしバイメタルは特殊な金属のため、加工が難しい部分も存在します。結合させた金属がばね鋼に近い特性の場合、非常に硬くなり曲げなどの加工が難しいことがあります。また、材料が炭素含有量が高い場合、溶接後すぐに冷却しないと表面割れが生じてしまうという点も挙げられます。これに留意して加工する必要があるのが難しいところです。そういえば、刀も真っ赤になるまで熱を加えた後、水で冷やしていますね。バイメタルはハラサワとしても未知数な金属。今後に可能性のある金属になりそうです。