ISO取得物語 ver.2

「取得には実際どうしたのか?」

2011年5月にISO9001:2008(登録コードJSAQ2612)を取得したハラサワ。今回は取得までの流れや作業上での工夫についてインタビューしました。

【インタビュー】
→ どのような段階を踏んで取得しましたか?またそのような段階を踏んだ理由を教えてください。
取得審査までの流れを大まかに分けると学習→構築→運用の3段階となりますが、ハラサワではこれを以下のように行いました。

ISO取得までの流れ
1. ISOに関しての予備知識の収集、ISO取得計画策定
2. 認証登録機関およびコンサルタントの選定、費用の予算
3. ISO取得プロジェクトチームの発足
4. チームでのISO要求事項に対する学習
5. 品質管理システム(QMS)の構築
6. QMSの運用
7. 内部監査の実施
8. マネジメントレビュー

 

最初は何から手を付ければ良いのかもわからなかったので、まずは「ISOとは何か?」レベルの基本を知るところからスタート。予習の後は取得までの大まかな見通しを立て、具体的な作業に移っていきました。

全体の流れの中でも一番時間と労力を費やしたのが、「品質管理システム(QMS)の構築=品質マニュアルと関連帳票の作成」です。作業量もそうですが現状の業務実態とISOの要求事項へのすり合わせに苦労しました。各現場で使用するようなものは極力それぞれの現場の方々に任せ、既存の手順書や帳票をそのまま採用し、私は様式の作成や管理方法の規定、ISOの要求事項に直結する書類の作成のみに作業を専念しましたが、この方が後々の運用で無理が生じることが少ないからです。
書類の作成に当たり、ファイルの保存には上書き保存ではなくその都度名前を付けて保存で「○○○○11.03.28」と保存ファイルを新たに作っていくのがオススメです。そうすれば、これまでの更新や改定の流れを後から確認することができるのでとても便利。

運用段階では構築したルールで業務を行うことになりますが、最低でも3ヶ月は運用実績が必要です。ここで「あの部署はダメだ」とか、「あいつはなってない」といった批判は厳禁。新しいルールがなかなか浸透しないのは当たり前です。上手くいかない場合はまずルールが多すぎないか、複雑すぎないかまずQMSを検証した方がいいでしょう。その後審査機関の審査を経て、晴れて認証取得という流れになります。

→ ISOに関する予備知識は何を使って、どのように習得しましたか?
まずはインターネットで情報を集めました。一番手軽だからです。情報として物足りないので併せて書籍での勉強もしました。書籍は①実用書的なものと、②中小企業でのISO取得の流れを示したものの2種を用意。①は詳しさを重視し、②は分かりやすさを重視して選びました。

①:【JMAQA JISQ9001:2008(ISO9001:2008)規格解釈 日本能率協会】
【中小企業のためのISO9001認証取得マニュアル 中小企業振興公社】
※資料を請求すれば無料で入手でき、しかも非常に実用的です。

②:【マンガISO9000シリーズ 中小企業における認証取得への挑戦 ビジネスコミック社】
【マンガ 続・ISO9000シリーズ-本審査から認証取得への道のり ビジネスコミック社】
【図解最新規格完全対応版ISO9001早わかり 中経出版】
※特にビジネスコミック社の2冊はお勧めです。

予習の後にしたのは、ISOを取得された企業の方たちへのヒアリング。主に取得の段取り、品質マニュアルの構成、作った帳票類とその様式、取得にあたっての苦労、掛かった時間と費用、コンサルタントの選び方と使い方などを伺いました。ヒアリングは仮説の検証や判断材料を集めるためにしたもの。ご協力くださった方たちの「実際にどうしたのか、どうだったのか」というお話は経験不足を補うのにとても役立ちました。重要なのは検証を通した“現実的なイメージ”を掴むことだと思います。要求事項に対する理解は追々深めていけば十分です。

また、「専門家の意見ではどうか?」と無料のセミナーにも出席しましたが、コンサルタントの集客を目的としたセミナーである場合が多く、私には不満が残る内容でした。

→ ISOの取得に関してコンサルタントは利用しましたか?また、その理由を教えてください。
利用しました。社長には「自社の人間が自身で考えてのISO取得にしたい」と頼まれていたので、できるだけコンサルタントのお世話にならないよう、利用をかなり限定した形でしたが。

ISOの要求事項は「~を確実にしなければならない」と記されていますが、これをどのようにするかはそれぞれの会社で違うもの。自社ではどうするかを議論するとき、例えばAさんが「この場合◯◯しよう」というのに対して、Bさんは「いや、××の方がいい」という意見が割れてなかなか結論に至らないといったことが必ず発生します。コンサルタントはそのときのジャッジ役や要求事項の解説、解釈の補正役として利用しました。

コンサルタントを利用する場合ISOを一から十まで教育してもらい、計画面から実作業面まですべてお任せされる企業様が大半と聞きます。しかしコンサルタントはISO取得に関してのプロかもしれませんが、自社の都合や思惑まで汲んでくれることはあまり期待できません。
取得の先を考えた時、一般的な利用方法は私たちには合わなかったのです。


【ご講読いただきありがとうございました。次号へ続く!】