成約案件から見る板巻きパイプや加工技術の活用事例.1

【板巻パイプの用途が分からない…】
様々な分野で幅広くお使いいただける弊社の板巻きパイプ。一方で自由自在な丸め加工と言われても、どのような場面で利用できるのか逆に想像し難いとお困りになるお客様もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで本稿ではお客様に弊社の板巻きパイプの利用方法をもっとご理解いただくため、これまでお客様からお引き合いいただいた板巻きパイプの様々な用途について、製品や技術を基準にご紹介いたします。

【こんな用途でこんな強み】
板巻きパイプの用途は大別すると以下の通り。

●規格外パイプの製作 ●パンチングパイプ ●リング ●タンク
●カバー ●ホッパー ●レデューサー ●フィルター ●チャンバー

この中で最近増えてきているのが製缶に近い案件。小型タンクやフィルターエレメントのカバーとして、φ300~φ500のサイズの製品をお引き合いいただいております。

径を自在に調節できる板巻きパイプは、他の部品とのハメ合わせで大きな強みを発揮しますが、絞り加工品(鏡板)との組み付けで製作する小型タンクもその代表的な製品の一つ。ヘラ絞りをした蓋部分と板巻き加工をした本体部分をASSY後、組み合わせの繋ぎ目を全周溶接して完成、というのがこの製品の製造工程。この際、蓋と本体の合わせに隙間があると溶接が上手くいかず、穴あきや熱による歪みが出てしまいます。

この点、弊社であれば同じ径でも展開長を変更することでキツメ、ユルメといった具合にハメ合わせを調整できますし、作業面でも熟練の溶接技術者を擁する弊社であれば「溶接電流やトーチの送りをASSY状態に合わせてする」といった対処で高い品質の製品をお作りすることが可能です。

フィルターエレメントのカバーも同様です。開口率の高い0.8tのパンチングシートを、ろ材本体の大きさに合わせて良好な真円度に丸めなければならないこの製品も、ウレタンロールと多数の芯金を保有する弊社なら様々な径に対応が可能。3本ロールで真円度を出し難い素材でも問題ありません。

カバーはフタや取っ手などの子部品を組み付けて完成となりますが、薄い素材を使用している分、前述の製品よりも非常にデリケート。慎重に扱わねば径が歪んでしまいますし、子部品の組み付けの際も気を付けなければ熱ですぐ歪んでしまいます。こうした扱い上の難しさも、弊社では①カバーの径をフタにASSYできる限界値に調整、②スポット点数と電流加圧の調整、③カバーに10mm程度のスリットを入れ、スポットで材料同士が引きつけられても、径の歪みや組み付け上の隙間を発生し難くする、といった工夫で対処しております。

「板巻きパイプ」とは呼んでも、決してパイプだけがその用途ではございません。円筒形状なのであれば幅広く適用可能なのが板巻きパイプの強み。呼称に縛られてしまうと、その用途もなかなか想像が広がらないかと存じます。これをシンプルに「形状の製作」や「丸め加工の技術」として見れば、みなさまにも「あれにも使えるかも?」という閃きが得られるのではないでしょうか。

本稿の執筆のきっかけは、以前技術説明会にご参加くださったお客様からいただいた「パイプという認識しかない相手に、それ以外の使いどころをより明確に示せれば、業界や分野の新規開拓に期待できるのではないでしょうか」とのご感想です。「板巻きパイプはいかがですか」と売り込まれて、自社の抱えるニーズにすぐ結び付けられるお客様は稀であるという、この事実に対する仕事がまだまだ不足していると痛感する、ありがたいご指摘でした。本稿がお客様の埋もれた需要を掘り起こし、弊社の板巻きパイプでそれを解決するきっかけになれば幸いです。今後ともどうぞお楽しみに。