ベテランの技術はレンズの上に…。スマートグラスで技術継承?
近年、中小の製造業における技術継承の難しさが深刻な問題となっており、多くの企業が生産活動の維持に苦しんでいます。この問題の背景には、いくつかの要因が絡んでおり、解決策を模索している企業も増えています。
その中で解決策の一つとして、業務用スマートグラスの導入というものがあります。スマートグラスは、AR技術を活用して、作業員に必要な情報や指示を視覚的に表示することで、業務の効率化や製造のクオリティ向上を実現させるものです。これにより、作業員は作業を行いながらマニュアルや作業指示を確認できるので、スムーズに作業を進めることができます。そのため、人手不足の問題の一つである熟練工の知識や技術を、継承していく時間を短縮できるので、若年層に知識や技術が継承される前に熟練工が退職してしまう、といった問題をなくすことができます。
実際に導入した事例などを調べてみると、研修に2ヶ月かかっていた企業がスマートグラスの導入によって3週間にまで短縮できたところや製造メンテナンスなどに利用しているところでは、点検のデータをすぐに確認できるため迅速な対応が可能になるなった企業などもあり、導入によるメリットはかなり大きいことがわかります。
しかしスマートグラスは簡単に導入できるものではありません。一番の問題は、スマートグラスの導入費用です。求める機能や性能によって変わってきますが、だいたい一台10万円から40万円程度になり、高いものになると100万円以上になるものもあります。
さらにシステムの導入やネット環境の整備などを行うことになると、簡単に導入を考えることができる金額ではなくなります。ただ初期費用の高さに対して長期的な業務の効率化などを得られることを考えると、十分に元を取ることができるものになります。
スマートグラスは中小企業の技術継承を難しくしている要因の一つである熟練工から知識や技術が継承される前に退職してしまう問題を解決でき、生産性の向上やコスト削減に繋がっていくため、労働環境が良くなっていきます。その結果、若手により良い待遇を提示することができるようになり、若手を集めやすくなると考えられるので、初期費用が高くても中小の製造業における技術継承の問題解決を目指すのであれば、積極的に検討すべきものになると考えています。