『イライラ・モヤモヤする 今どきの若手社員のトリセツ』

時期的に若手人材たちの5月病が気掛かりなこの時期。3年以内に30%の人間が離職してしまうのが常とはいえ、指導担当に当たる方々は日夜若手の成長と定着のために腐心しているはず。それを知ってか知らずかの若手たちの振る舞いについ「近頃の若い者は…」などという言葉が頭をよぎることもあるでしょう。そんなみなさまへ昨今特にデリケートになった今どきの若手社員の理解する上での参考になるかもしれない一冊として今回『イライラ・モヤモヤする 今どきの若手社員のトリセツ 平賀 充記 (著)』を紹介いたします。

本書は冒頭での「今どきの若手社員」と「オトナ」の整理をベースに、各章の見出しについてそれぞれ「オトナ」が「今どきの若手社員」に対して問題に感じるポイントの具体例が挙げられ、「今どきの若手社員」がなぜそのようにするかの解説、そしてその解決策の提案で結ばれる展開で進みます。要は「問題の提起」「解説」「解決策の提案」の三段階の構造です。そして具体例に対する展開と同様、各章の最後に各章の見出しに対する問題の提起、解説、解決策の提案の三段階で各章が結ばれる形になっています。端的に言うと、各章の見出しと最後の「イラモヤの素 若手社員の生態解説」だけ読めば趣旨が理解できる内容となっており、忙しい方にも読みやすいつくりをしているのです。また読者が直面する具体的イラモヤ事例がある場合、目次から該当する具体例を引けばなにかしらの処方を得られるというなかなか便利なつくりをしています。

この本の特徴は、一般的なマネジメントや人材育成の手法に関する書籍の多くが「今どきの若手社員」側をどうするかが述べられていくのに対し、本書は基本的には『「オトナ」側が見方、考え方、振る舞い、働き方を見直すべき。改めるべき』という主張で一貫している点です。指導・管理する側とされる側のパワーバランスはこれまでする側に大きく傾いているのが常でした。本書はこの前提・常識を取り払い、対人葛藤の葛藤処理パターンの選択肢を増やす対処法が示唆されているのです。

「おわりに」の中で、著者自身かつてリクルートでいわゆるモーレツ社員として辣腕を振るっていたものの、退職後マネジメントで挫折したところから考えを改めたとのエピソードがあります。読後、みなさまご自身の働き方、今どきの若手社員への関わり方を省みて何か思い直すようなことが一つでも見つかれば幸いです。