「半熟ゆで卵のレシピで解説 プロセス管理と品質保証-4」 4M要素「Man (人)」

半熟ゆで卵のレシピとプロセス管理を結び付けて分かり易く説明する本稿ですが、今回は新入社員教育真っ只中の時期もあって4M要素の「Man (人)」についてお話いたします。これまでの記事でご説明した「Material (材料)」「Method (方法)」の2要素である材料の条件、調理方法を標準化しているのにそれでも半熟ゆで卵のでき上がりがバラつく。原因を調査してみると作業者がこれまでとは別人だったことが明らかになりました。

「『沸騰した湯』ってどれくらい沸騰していればいいんだろう」とか、「一番上の卵は半分くらい頭が出ているけど、これも『卵がすべて浸かる』って言えるのかな」とか。

そんな風にモタクサしている内に冷蔵庫から出したばかりの卵は調理場の熱気に当てられてすっかり温くなってしまっていたり。材料の条件、調理方法を標準化していても、それを実行する作業者がベテランと新人の作業者では作業結果に違いが出ることはみなさまなら容易に想像できるはず。ベテランであれば明確化するまでもない不文律でも、普段その作業に従事してない人が作業する場合、作業者毎の認識・力量・作業結果を管理・制御しないと品質のバラつきは必至です。

こうした事態を起こしやすいのが新人や応援者です。しかし彼らが悪者なのではありません。力量とその作業結果が疑われるのは自明のことで、だからこそこうした作業者を運用する場合、前もってその力量と作業結果が問題ないように補強・保証する仕組みが必要なのです。例えば、新人や応援者が作業に入る前に「作業者導入教育」を実施し、ベテランと同水準の力量を身に着けさせる手法や、品質に大きく影響を及ぼす」作業には「作業資格」を持つもの、作業してよいと「作業者認定」された作業者しか作業させないといった手法があります。

異常や不具合の原因になる要素として4M要素の中でも「Man (人)」の変化点は真っ先に確認されます。「不慣れなものがしたから不具合が出てしまった。すみません」では済みません。誰がしても間違いなく狙った品質が得られる体制を整えることは昨今の人材の採用難、定着難の中にあっても企業にとって大きな武器となるはず。力量保証の仕組みは今後ますますその価値・必要性が高まるものと考えます。